WAIS-IV・WAIS-5の指標とCHC能力の対応
CHC理論の5能力で整理すると、日本版WAIS-IVの4指標と米国版WAIS-5の5指標の違いは次のように対応します。
| CHC能力 | 日本版WAIS-IV | 米国版WAIS-5 |
|---|---|---|
| Gc:結晶性知能 | 言語理解(VCI) | Verbal Comprehension Index(VCI) |
| Gv:視空間処理 | 知覚推理(PRI) | Visual Spatial Index(VSI) |
| Gf:流動性推理 | 知覚推理(PRI) | Fluid Reasoning Index(FRI) |
| Gwm:ワーキングメモリ | ワーキングメモリー(WMI) | Working Memory Index(WMI) |
| Gs:処理速度 | 処理速度(PSI) | Processing Speed Index(PSI) |
違いがあるのはGvとGfです。WAIS-IVでは両方が知覚推理(PRI)に含まれていましたが、WAIS-5では視空間(VSI)と流動性推理(FRI)に分かれました。WAIS-5の変化の中心は、指標が一つ増えたことよりも、PRIにまとめられていたGvとGfを別々の得点で読めるようになったことです。
WAIS-IVのPRIにはGvとGfの課題が含まれていた
日本版WAIS-IVではGvとGfが同じPRIに入っていますが、下位検査で行う処理は分かれています。
WAIS-5で新しい能力が追加されたのではありません。WAIS-IVの下位検査にすでにあった違いが、VSIとFRIという指標として表に出た再編です。
日本版標準化データ1,120人を分析した2026年の研究でも、理論を組み込んだベイズモデル比較では、CHCに基づく5因子・高次gモデルが従来の4因子モデルより良い適合を示しました。
視覚性ワーキングメモリと拡張指標
米国版WAIS-5では、聴覚課題による主要WMIに加えて、Symbol SpanとSpatial Additionから、記号や位置を扱うVisual Working Memory Index(VWMI)を算出できます。ほかにも、各領域をより多くの下位検査で見る拡張指標や、特定の処理を見る補助指標があります。
| 補助指標 | 主に詳しく見るもの |
|---|---|
| Verbal (Expanded Crystallized) Index(VECI) | 類似・単語に知識・理解を加えた、より広いGc |
| Expanded Fluid Index(EFI) | 行列推理・バランスに算数・Set Relationsを加えた、より広いGf |
| Quantitative Reasoning Index(QRI) | バランスと算数に表れる量的推理 |
| Expanded Working Memory Index(EWMI) | 聴覚課題と視覚課題を合わせた、より広いGwm |
WAIS-5はCHC理論に近い指標構成になった
GvとGfの分離やワーキングメモリの補助指標を見ると、米国版WAIS-5はWAIS-IVよりもCHC理論の能力区分に対応させやすい指標構成になりました。
ただし、CHC理論に近い指標構成になったことと、5つの能力が統計的にも明確に分かれることは別です。米国標準化データ2,020人を独立再分析した2026年の研究では、GvとGfを分けた5群因子ではなく、両者をまとめた4群因子が支持されました。
WAIS-IVからWAIS-5への下位検査やFSIQの変更は、WAIS-IVとWAIS-5の違いで詳しく比較しています。
BrainTypeIQでは、Gc、Gf、Gv、Gwm、Gsの5領域を分けて算出し、総合IQとともに認知プロファイルを確認できます。