成人ADHDのPSIは一律に低くない
成人ADHD群のWAISの処理速度指標(PSI)は平均96.2で、規準平均100との差は確認されませんでした。2024年のWAIS-IV・WISC-Vメタ分析では、成人で一貫していたのはPSIの低下ではなく、ワーキングメモリ(WMI)の小幅な低下でした。
個人の結果でPSIが低い場合は、その得点を本人のほかの能力や日常の困難と照らして読みます。仕事が遅いと感じても、最初から基礎的な処理速度だけを原因にせず、どこで時間が延びているかを分けて考えます。ADHDの指標全体の傾向はADHDのIQ・WAIS傾向で説明しています。
仕事が遅れるのは、停止・再開・やり直しが積み上がるから
ADHDで研究上より明確なのは、平均的な反応の遅さより、同じ課題の中で速さが揺れ、ときどき非常に遅い反応が混ざることです。
51研究をまとめた反応時間分布のメタ分析では、普段の反応速度に近い分布中心の差はほぼゼロでした。一方、反応速度のばらつきと、ときどき現れる非常に遅い反応はADHD群で大きい結果でした。
仕事でも、一件ごとの入力や判断は速いのに、注意が外れて動きが止まる、作業位置を見失って読み直す、割り込み後に判断基準を作り直す、急いだ後のミスを修正するといった時間が加わると、終了は遅れます。
総所要時間 = 実作業 + 停止 + 再開 + 修正 + 確認
見るべきなのは一件の速度ではなく、どの工程が総所要時間を延ばしているかです。
WAISのPSIは、作業速度だけを測っているわけではない
日本版WAIS-IVの処理速度課題には、基本検査の「符号」「記号探し」と、補助検査の「絵の抹消」があります。
PSIは純粋な「頭の回転」ではありません。処理速度(Gs)に、注意、視覚探索、規則保持、手の動き、速度と正確性の取り方が重なります。PSIが低い場合は、下位検査の違いと日常で時間がかかる作業を照らし合わせ、どの負荷が得点に影響したかを絞ります。
速さを鍛えるより、止まりにくく戻りやすい工程にする
総所要時間を安定させるには、速く処理し続けようとするより、停止・再開・やり直しに使う時間を減らします。
| 変える部分 | 具体的な仕組み |
|---|---|
| 現在地 | 完了位置・残数・次の一手を見える場所へ置く |
| 割り込みと再開 | 通知は作業の区切りでまとめ、中断前に具体的な再開メモを残す |
| 反復作業 | 入力順、ファイル名、定型文、確認順を固定する |
| 作業の終わり | 「見出しを三つ置く」「10件入力する」のように作業単位と完了条件を決める |
停止・再開・修正に使う時間が減る仕組みほど、総所要時間を安定させます。内容は理解できるのに着手・確認・提出で止まる場合は仕事が止まる工程の切り分けまで広げます。PSI自体が低い場合の一般的な工夫は処理速度が低い人の特徴で詳しく説明しています。