知識では一般的な事実を答える
WAIS-IVの「知識」は、出来事・もの・場所・人など、これまでに身につけた一般知識を口頭で答える課題です。問題文から新しい規則を見つけるのではなく、いわゆる「物知りの広さ」を見ます。
日本版WAIS-IVでは、「知識」は「単語」「類似」とともに、言語理解指標(VCI)を構成する基本検査です。
知識では情報を獲得・保持し、必要なときに取り出す
一般知識を正しく答えるまでには、三つの過程があります。
- 獲得 — 情報へ接し、意味のある知識として覚える
- 保持 — 覚えた知識を長期にわたって保つ
- 取り出し — 質問に対応する知識を思い出し、答えとして言語化する
過去に接したことがあっても、覚えていない、思い出せない、答えとして言えない場合は正答になりません。獲得・保持・取り出しは別々の評価点ではなく、一連の結果が一つの「知識」得点として表れます。
教育・読書・関心が知識の範囲をつくる
一般知識は、学校教育だけで作られるものではありません。読書、仕事、趣味、ニュース、日常の会話など、長年にわたって触れてきた情報が知識の範囲を広げます。読書を通じた文章への接触量は、一般知識の広さとも結びついています。
関心は、どの分野の情報に触れ、調べ、覚えるかを方向づけます。そのため、一つの専門分野には非常に詳しくても、分野をまたぐ一般知識の範囲は広くないことがあります。
何を一般知識として問うかは文化によって変わり、日本版WAIS-IVの項目も日本の文化や時代背景に合わせて選定・調整されています。
知識の得点が高い・低い場合
得点が高い場合は、同年齢と比べて、分野をまたぐ一般的な事実を幅広く保持し、質問に対応する正答として取り出せたことを示します。長年の学習や情報接触が、使える知識として蓄積されています。
得点が低い場合は、検査で問われた一般知識のうち、正答として取り出せた範囲が同年齢と比べて狭かったことを示します。その背景を考えるときは、教育や読書などで情報へ接した範囲、関心分野と出題範囲の重なり、知識の保持、質問時の取り出し、口頭で答える段階を見ます。
評価点を同年齢との比較で読んだうえで、本人の「単語」「類似」より高いか低いかを見ると、一般知識が言葉の精密さや抽象推理より相対的に高いか低いかが分かります。結果全体の読み順はWAIS結果の見方で説明しています。
単語・類似との違い
「知識」「単語」「類似」は、いずれも身につけた言葉や意味知識を使います。違うのは、その知識を使って最終的に何を答えるかです。
| 下位検査 | 直接求められること | 中心となる処理 |
|---|---|---|
| 知識 | 一般的な事実について答える | 一般知識の獲得、保持、取り出し |
| 単語 | 一つの言葉の意味を説明する | 語彙知識の取り出し、意味の精度、定義としての言語表現 |
| 類似 | 二つの言葉の共通点を説明する | 概念の比較、共通関係の生成、言語的な抽象推理 |
「知識」が「単語」より高いなら、一語の意味を精密に定義することより、一般的な事実を蓄積して答えることが相対的な強みです。「知識」が「類似」より高いなら、二つの概念を比較して共通点を作ることより、すでに身につけた事実を取り出すことに強みがあります。
BrainTypeIQは語彙と言語類推で知識の精度と活用を見る
BrainTypeIQの9科目のうち、結晶性知能(Gc)を扱うのは「語彙(反意語)」と「言語類推」です。一般知識の量を直接問うのではなく、蓄積した言語知識をどこまで精密に理解し、関係の推理へ使えるかを見ます。
語彙(反意語)は、提示語と反対の意味を持つ語を選び、似た意味や関連する語に引っ張られずに語義を見分ける課題です。言語類推は、見本の語の組から関係を抜き出し、同じ関係を別の語の組へ当てはめます。二つを通じて、言葉の意味を知っているだけでなく、その知識を正確に使う力を捉えています。