理解は社会的な規則や一般原則を説明する補助検査
WAIS-IVの「理解」は、社会で共有されている規則、慣習、一般原則について、その理由や意味を口頭で説明する課題です。「何をするか」を答えるだけでなく、なぜその行動が必要なのかまで言葉にします。
日本版WAIS-IVでは、言語理解指標(VCI)に属する補助検査です。通常のVCIを構成する基本検査は「類似」「単語」「知識」であり、「理解」は必要に応じて言語理解を別の角度から確かめます。
知っていることを理由として言葉にする
社会的な規則を知っているだけでは、十分な回答にはなりません。問いに関係する知識を取り出し、その状況へ当てはめ、理由や一般原則として筋道立てて説明する必要があります。
回答には、次の処理が重なります。
- 問いの内容を正確に理解する
- 関係する社会的・一般的知識を取り出す
- 状況と知識を結びつけ、理由や結果を考える
- 個別の場面だけでなく、他の場面にも通じる説明へまとめる
- 口頭で相手に伝わる形にする
理解は社会性そのものを測る検査ではない
「理解」は社会的な内容を扱いますが、社会性そのものを測る検査ではありません。
検査では、表情や声の調子から相手の感情を読むこと、会話の間を調整すること、集団の中で実際に振る舞うことは観察しません。そのため、低得点を「常識がない」「社会性が低い」と読むのは誤りです。高得点も、社会的な規則を説明する課題に強いことを示すのであって、人付き合いの上手さを示す得点ではありません。
理解得点と現実の社会的機能との関係を調べた研究でも、理解得点を一般的な社会性の指標として読むことは支持されていません。
理解の得点が高い・低い場合
得点が高い場合は、同年齢と比べて、社会的な規則や一般原則の要点を取り出し、その理由や意味を筋道立てて説明することが得意です。
得点が低い場合は、回答が具体的な一場面にとどまる、行動は答えられても理由まで広がらない、複数の理由を整理して説明しにくいといった形で表れます。背景を考える軸は、関連する知識の範囲、問いの理解、状況と原則の結びつけ、一般化、口頭表現です。
本人の中で「理解」が「知識」より明確に高いなら、一般的な事実を思い出すことより、既知の知識を理由として説明する課題が相対的な強みです。「類似」より明確に高いなら、二つの概念をまとめることより、社会的な状況から理由や原則を説明する形式が得意です。得点全体の読み順はWAIS結果の見方で説明しています。
類似・知識との違い
「理解」「類似」「知識」は、いずれも結晶性知能・言語理解に関わり、身につけた言葉や知識を使います。違うのは、その知識を使って最終的に何を答えるかです。